書道の有名作品は、言うまでもなく高額です。運よく有名作品を手に入れられたら、細部まで鑑賞して込められた想いにも触れましょう。そのためには書道に関連する知識と、正しい書道作品の見方を知っておきたいところです。
広島習字倶楽部が、日本の書道史に関連するお話をご紹介するとともに、書道作品の鑑賞方法について解説します。有名作品の購入や取り寄せ依頼を検討している方は、ぜひお読みください。
目次
書道作品を鑑賞・購入する前に知っておきたい書道家
書道作品を鑑賞・購入するなら、有名書道家や漢字について知っておくと役立ちます。それぞれの基礎知識をつけていきましょう。
有名書家について
こちらでは書道を習い始めたときや、書道作品を見る際に知っておきたい有名書家をご紹介します。
王羲之(おうぎし)
王羲之は六朝時代の書道家で書聖と呼ばれる人物です。王羲之の書風には強い個性がありません。ひたすらに読みやすく、整っていることが王羲之の書の特徴です。
王羲之の書は万人に好ましく思われる美しい文字であることから、漢字の基礎として伝わってきました。それは現代でも同じで、私たちが見て「整っている文字」「美しい文字」と感じる漢字のバランスは、王羲之の書が基準になっているのです。
いくつもの時代を経てもなお、変わらずに受け継がれる文字の書き手であることこそ、王羲之が書聖と呼ばれる最大の理由といえるでしょう。
初唐の三大家
初唐の三大家は文字をより発展させた人物たちです。
唐は文化の発展が目覚ましい時代で、二代目皇帝太宗は書道にとりわけ熱心でした。その臣下に書の達人である欧陽詢(おうようじゅん)・虞世南(ぐせいなん)・褚遂良(ちょすいりょう)がいます。彼らが初唐の三大家です。
3人は王羲之の書をお手本とし、楷書を完成に至らせ、そこから個性的な書体を確立させました。それが現代にも伝わる篆書・隷書・草書・行書です。
顔真卿(がんしんけい)
初唐の三大家が王羲之の書をお手本にして楷書を完成させたことで、世の中は美しく丁寧な書風が一般的になり、王羲之は神格化されるほどになっていました。そこに新しい風を吹かせたのが顔真卿です。
顔真卿の書は王羲之の文字とは対照的ともいえる書風で、荒々しさと柔らかさの両方の表情を持っています。後の世では王羲之と同格かそれ以上の人物として紹介されるようになりました。
また、顔真卿は技法の一つである「蔵鋒」を生み出した人物でもあります。
日本の有名な書家
三筆・三蹟の呼称も書道の有名作品を購入する際には知っておきたいです。
三筆とは空海・嵯峨天皇・橘逸勢の3人のことを指します。遣唐使として中国に渡り、そこで書道を学んで日本に持ち帰った人たちです。学んだ漢字を人々に教えて普及させました。
三蹟または三跡は、小野道風・藤原佐理・藤原行成の3人です。それぞれの名前を取った書風が継承されています。三蹟は三筆が伝えた書道の文化を日本の書道として確立させました。
三筆と三蹟については、後ほど詳しく解説します。
漢字について
毎日私たちが当たり前に使用している漢字は、もともとは遣唐使によって中国から伝わっています。
とはいえ、現代の中国で使われている漢字と日本の漢字では、読みが全く異なり、使い方や意味が異なることも多いです。
こちらでは漢字と、漢字から生まれた平仮名について解説します。
初めて伝わった文字は漢字
中国から漢字が伝わるまで、日本では文字が認識されていませんでした。記号や絵のようなものを使った伝達方法や記録方法はあったかもしれません。しかし、多くは言葉と記憶に頼っていた状態です。
そんな日本に初めて伝わった文字が漢字だとされています。時代ははっきりしていませんが、弥生時代の出土品から漢字のようなものが確認できます。ただし、当時から“文字として”使われていたかまではわかりません。
現在の日本語や日本書道につながる漢字の記録は、仏教の伝来や遣唐使の時代から明確になります。前述した三筆や三蹟によって、文字の文化として漢字が広まるようになったわけです。
漢字から万葉仮名が生まれる
日本に根付いた漢字の文化は、日本独自のものに変化します。現代の音読み・訓読みにつながる変化です。
例えば「林」という漢字は中国では「リン」と読みます。それに日本独自の「はやし」という読み方を付加したり、山を「サン」「やま」と呼んだりするなどです。
「山→也麻」「うつせみ→鬱瞻」など漢字が持つ字音を使って音を表記する「音仮名」や、「やまと→大和」のように和訓を使った「訓仮名」も生まれました。
これらの日本独自の用法を万葉仮名と呼称し、万葉集に代表される歴史的な書物でも多く見られます。
平仮名の前に生まれた草仮名
平仮名は日本で生まれた独自の文字です。そんな平仮名の前には「草仮名」という文字がありました。
中国から伝わった漢字の画数が多かったため、略して書く人が出てきたことが始まりです。簡略化された文字が主流となり、漢字を崩した書体の「草書」をまねて「草仮名」という名前が付けられました。
そして草仮名がさらに簡素化されたのが「仮名」です。こう考えると、日本人は昔から効率を重視する傾向が強かったのかもしれません。
書道の有名作品を購入した後の鑑賞方法
書道の有名作品を購入したら、書の流派や成り立ちまで知って深く鑑賞するのがおすすめです。
こちらでは、三筆や三蹟、鑑賞方法について詳しく解説します。
三筆・三蹟について
書道の有名作品が手に入ったら、日本の書道の成り立ちを押さえてから見るのがおすすめです。
まずは、前項で触れた三筆と三蹟について詳しく解説します。
三筆(さんぴつ)とは
三筆は遣唐使として中国に渡り、漢字の文化を日本に伝えて広めた3人の人物です。
具体的には、以下の3人を三筆と呼びます。
- 空海
- 嵯峨天皇
- 橘逸勢
空海は書道に興味がない方でも、教科書などで見た記憶があるでしょう。真言宗を確立させたお坊さん、というイメージが強いかもしれません。「弘法大使」という別名も持つ空海は、「弘法筆を選ばず」のことわざになっているほど書の達人として敬われていました。
空海の書風は上品で穏やかな印象が特徴です。その書風がたおやかで上品な日本の文字へとつながりました。
そんな空海と交流があったのが嵯峨天皇です。もともとは初唐の三大家である欧陽詢の書風を贔屓にしていた嵯峨天皇ですが、空海に影響されて柔らかな書風へと変化したといわれています。
橘逸勢は、空海や最澄らと一緒に遣唐使として中国に渡った1人です。唐の文人に腕を認められるほどの隷書の達人でした。橘逸勢は三筆としてはもちろん、承和の変の首謀者として濡れ衣を着せられたことでも有名です。
三蹟(さんせき)とは
三蹟は三跡と表記されることもあります。
- 小野道風
- 藤原佐理
- 藤原行成(権大納言)
三筆によって伝わった漢字を、三蹟が和様という日本独自の書として確立しました。
三筆と違って三蹟は同時に活躍していたのではなく、小野道風から始まって順番に継承され、藤原行成で和様が完全に成ったとされています。3人の書風はそれぞれの名前から、野跡(やせき)・佐跡(させき)・権跡(ごんせき)と呼ばれて継承されました。
3人の中でも、始まりの小野道風は達筆で知られています。三筆から伝わった王羲之の書風を軸とした美しい文字が特徴です。
有名な作品には草書の『秋萩帖』楷書・行書・草書の『屏風土代』などがあります。日本の書道に触れるなら、小野道風の作品はぜひ鑑賞しておきましょう。
作品の鑑賞方法
作品そのものを鑑賞するときは、心のままに見て、正直な感想を持つのが正解です。もっと深く書の世界に入りたいときは、以下のことを試してみてください。
1.余白を含めて全体を見る
書道作品は文字だけでなく、余白も含めて一つの作品です。依頼してようやく手に入った有名作品だと、墨にばかり目がいきがちでしょう。しかし、作品の本当の良さは全体を見なくてはわかりません。
全体を見ていると意図的に崩されたバランスや、より強調されている箇所などがわかり、作品の個性にも気づくはずです。その上で、作者の意図や想いに想像を巡らせると、より深く書道作品を理解できます。
2.文字を理解して意味を知る
日常生活で目にする機会が多い楷書体や隷書体の書は読みやすいですが、崩した文字やデザイン性の強い文字は簡単に読めません。絵画を見るような感覚で鑑賞しても楽しめますが、せっかくの字ですから意味も知るのがおすすめです。
文字が持つ意味と書のテイストや、どのように字が変化しているのかなど、知れば知るほど書道作品の奥深さに触れられるでしょう。
3.作者の情報を調べる
書道の有名作品は、作者の歴史を調べるのも楽しみ方の一つです。流派や所属団体に加え、作者の人柄や考えを知ると書が違って見えてきます。最近は作者本人がプロフィールを公開していることも多いので、「どんな人が書いたのか」を知るハードルが低くなりました。ぜひ活用しましょう。
故人の作品である場合は、時代背景や歴史との関わりを見るのもよいでしょう。
4.線や点が持つ意味を考える
書道作品ははらい方やはね方、墨の飛び散りや線の太さなど、あらゆる部分に作者の想いが込められています。細部までじっくり見れば、力の加減や意図的な動きにも気づけるでしょう。
筆の流れや手首の動きを一画ずつイメージして、なぞってみるのもおすすめです。筆の運びに隠された意味や、作者の動きをリアルに感じられるかもしれません。
5.書道関連の書籍や動画を見る
書道に関連する作品は書だけではありません。書籍や映画、アニメ、動画など多くの書道関連作品が存在します。
そういった作品を見てからもう一度同じ書道作品を見てみてください。それまで見えていなかったものに気づいたり、全く違う見方に気づいたりすることがあります。
6.繰り返し鑑賞する
書道作品は見る人の知識や感性だけでなく、心の状態でも見え方が変化します。見る時間や日が変われば見え方も変わるため、ぜひ繰り返し鑑賞しましょう。
購入した有名作品はもうあなただけのものです。時間を気にせず、ときどき書だけに集中して鑑賞する時間を作ってください。
書道作品の購入・オーダーメイド依頼は広島習字倶楽部へ
書道の有名作品は美しさや迫力があり、息をのむほどのものが揃っています。見るだけでも十分ですが、知識があればより深く鑑賞できます。
お気に入りの一品を手に入れたら、ぜひその作品・作者のことを調べてみてください。そして作品全体を見て、細部に込められた作者の想いを感じてみましょう。
広島習字倶楽部では、日本書道評論家大賞・令和旭日芸術賞やフランス、イタリア、中国などの海外でも多数の賞を受賞した書道家の作品を販売しております。お客様のご希望に合わせてオーダーメイドの書道作品に仕上げます。関心がありましたら、お電話もしくは販売受付フォームにてお問い合わせください。
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